【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 ヘアメイクも終わり、豪華なティアラをつけて、ついに準備は整った。

 スタッフの方も出払って、一人控室で待っていると、外から控えめにノックの音がした。

「はい」

「俺だ、入っていいか?」

社長の声だった。少し気まずい気持ちはあるけれど、断る理由もない。

私は「どうぞ」と素っ気なく返事をした。

 ドアを開けて現れた社長は、私の姿を見て息をのんだ。

 その瞬間、私の方も言葉を失う。

 白いタキシードに身を包んだ社長は、あまりにも眩しくて。

(王子様……!)

 心の中で絶叫する。

完璧に整いすぎていて、ただ見つめているだけで心拍数が跳ね上がっていく。

「綺麗すぎて、隣に立つのが緊張するな」

──いや、それ、私のセリフ。

「人生の幸運を使い果たしたかな」

──それも、今まさに私が思っていたこと。

「……まだ怒っている?」

 返事をためらっている私に、社長はおずおずと、機嫌をうかがうように尋ねてくる。

 どう答えたらいいのかわからなくて黙っていると、社長が続けた。

「言い訳に聞こえるだろうけど、本当に連絡が取れなかった。現地でトラブルに巻き込まれて……本気で死ぬかと思ったくらいだ。今こうして無事にいられるのは奇跡だと思ってる」

 死ぬかも、なんて。物騒すぎる話だ。