【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

(仕方ない。足で追うのは諦めて……エレベーターだ)

 誰もいないはずだから、エレベーターは二十三階で止まっている。

ボタンを押せばすぐ来るだろう。疲れた人間の足より、機械の方が早い。

 そう判断して階段を離れ、エレベーターへと急いだ。

 予想通り、すぐに扉が開き、一階まで一気に降りる。

(よし、ここで待っていれば……必ず来るはずだ)

 だが、しばらく待っても誰も現れない。

嫌な予感がして階段を見上げると、そこには誰の姿もなかった。

(先に降りた? いや、時間的に俺の方が早いはず……まさか、非常階段か⁉)

 慌てて非常階段へ回るが、そこにも誰もいない。

(やられた……!)

 舌打ちしながらエントランスへ向かい、待機していた車に飛び乗った。

 ただならぬ様子で駆け込んだ俺を見て、高城が目を丸くする。

「どうしたんですか、その靴……」

「あいつのだ。逃げられた」

 息を荒げ、靴を握りしめる俺を、高城は眉をひそめて見つめた。

「あいつ? もしかして……あの子のことですか?」

「説明はあとだ! 探せ。まだ近くにいるはずだ!」

 高城はハッとし、すぐにエンジンをかけた――。