【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 誰かいる……?

不審者かもしれないと警戒し、音のした方へ進む。

廊下の端の階段へ行くと、誰かが勢いよく駆け下りていくのが見えた。

「誰だ! 止まれ!」

明らかに逃げている。やましいことがあるのだろう。

階段を駆け下りて追いかけると、逃げる途中でその人物の靴が片方脱げ、立ち止まって振り返った。

(女……? あのシルエット、あの顔は……)

 逃走者はすぐに顔を背け、靴を諦めたのか、また駆け下りていった。

 その人物が誰なのか気づいた瞬間、頭に血がのぼる。

「待て、こらぁ!」

 怒っているわけではない。

ただ、なぜか逃げられていると思うと、声に荒さが混じった。

 ──なぜ俺から逃げる!

 必死で彼女を追いかける。

掴まえたい。ずっと求めていたのは彼女だ。

 感情のタガが外れるのが自分でもわかった。

 落ちていた靴の場所まで来ると、俺はいったん足を止め、靴を拾い上げた。

 シンプルな黒のリクルートパンプス。

 階下を見下ろすと、彼女はものすごい速さで駆け下りていた。

 このまま追っても追いつけないかもしれない。