【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 外はすっかり暗くなり、気づけば深夜になっていた。

「ああもう、無理だ」

 デスクチェアの背にもたれ、天井を仰ぐ。

「そりゃそうですよ。一日で決められるわけないじゃないですか」

 応接ソファでナッツをつまみながら寛ぐ高城が、のんびりと口にした。

「違う。結婚そのものが無理だ。諦める」

「えぇ~、全部会ってみたらどうです? 運命感じる子がいるかもしれないですよ」

「いや、俺にはわかる。無理だ」

「結婚はビジネスだって言ってたのに、感情入りまくりでえり好みしてるじゃないですか」

 その通りすぎて腹が立つ。

別に結婚に夢を見ているわけでも、恋愛を望んでいるわけでもない。

けれど──いざ決めようとすると、心が頑なに拒絶するのだ。

やはり駄目だ。

俺には、結婚なんて到底できない。

「帰ろう。遅くまでつき合わせて悪かったな」

「相談役にはどう説得するつもりですか?」

「正直に伝えるさ。だが、あの手この手で結婚させようとしてくるだろうから、全力で断る。高城もそのつもりでいろ」

「わ~、大変そう。でも、それでいいと思いますよ」

 高城は目を細めて微笑んだ。

ふざけた様子もある秘書だが、俺にとって一番の理解者でもある。

その笑顔を見た瞬間、すっと肩の荷がおりた気がした。