「ねえ、彼氏でも待ってるの?」
わざと声を弾ませ、近くの男性社員に聞こえるように言ってくる。
「いませんよ」
努めて軽く答えると、すぐに追い打ちのような言葉が続いた。
「ほんと? そんなに可愛いのに」
「ほら、顔で採られたって噂もあったくらいだし」
胸の奥がちくりと痛んで、思わず顔を上げる。
けれど彼女たちは臆することなく、口元を隠して笑っていた。
確かに、私の出身大学はこの職場の中では目立って見劣りする。
だからこそ仕事で認められたいのに……。
反論しようと口を開きかけて、言葉が出なかった。
事実、まだ残業中の同僚を置いて帰ろうとしているのだから。
「──別に何時に帰ったって構わないだろ。やることをやっていれば」
悔しさに黙り込んだ私に、低い声が割り込む。
助け舟を出してくれたのは、同じ部署の佐伯哲治さんだった。
営業一課の絶対的エース。
二十八歳の若さで課長に昇進した実力者であり、しかも容姿端麗。
わざと声を弾ませ、近くの男性社員に聞こえるように言ってくる。
「いませんよ」
努めて軽く答えると、すぐに追い打ちのような言葉が続いた。
「ほんと? そんなに可愛いのに」
「ほら、顔で採られたって噂もあったくらいだし」
胸の奥がちくりと痛んで、思わず顔を上げる。
けれど彼女たちは臆することなく、口元を隠して笑っていた。
確かに、私の出身大学はこの職場の中では目立って見劣りする。
だからこそ仕事で認められたいのに……。
反論しようと口を開きかけて、言葉が出なかった。
事実、まだ残業中の同僚を置いて帰ろうとしているのだから。
「──別に何時に帰ったって構わないだろ。やることをやっていれば」
悔しさに黙り込んだ私に、低い声が割り込む。
助け舟を出してくれたのは、同じ部署の佐伯哲治さんだった。
営業一課の絶対的エース。
二十八歳の若さで課長に昇進した実力者であり、しかも容姿端麗。



