【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 会社に戻ると、秘書の高城を呼びつける。

「見合い写真とプロフィールを全部持ってこい」

「えっ、社長、結婚するんすか!?」

 秘書の高城は、俺と二人きりになると、運動部の後輩のように軽い敬語で話してくる。

仕事ぶりは優秀だが、根は飄々とした軽い性格らしい。

俺が見た目ほど怖くないと悟ったのか、次第に素を出すようになった。

……まあ、そういう高城のほうが、俺は嫌いではない。

「ああ」

素っ気なく答えると、高城はあっという間に大量の見合い写真を抱えてきた。

こういうときは仕事が早い。

「……で、初恋の子はどうするんです?」

 いきなり痛いところを突いてくる。

高城には、隠してもすぐ見抜かれてしまう。

「あれは……ただの初恋というか、気になる子というか」

「話しかけてもいないですよね。社長って意外と奥手っすよね」

「俺はお前と違って慎重派なんだ」

「もう、いっそその子にプロポーズしたらどうです?」

「無理だろ。相手は俺のことを覚えてすらいない。それに──恋愛と結婚は別だ」

 そう言いながら、これまで見向きもしなかった見合い写真に目を通す。

「ふ~ん。御曹司って大変ですねぇ。恋人を次々に変えてた社長が、あの子と再会してから遊びをやめたから、本気だと思ってたのに」

「遊びって言い方はやめろ。ただ、続いた相手がいなかっただけだ」