【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

そんな俺を変えるきっかけとなったのは、ある少女との出会いだ。

けれど彼女はまったく覚えていないらしいので、ここでは割愛する。

大切な一人息子を失った祖父母は、その悲しみを俺への愛情で埋めようとした。

ただ、その愛情は極端で、同時に「跡取りはお前しかいない」という重圧を背負わされた。

俺は努力する姿を人に見せるのが嫌いで、いつもさらっとやっているように見せていたが、裏では死ぬほど努力していた。

俺以上に努力した人間を、俺は知らない。

大学生の時に祖母が亡くなり、それから祖父は経営を俺に託そうと準備を始めた。

俺も必死に応えようと努力した。

大学を卒業して四年後、祖父の病が発覚し、経営交代を迫られた。

祖父が数年かけて役員を説得し、盤石な基盤を作っていたため、俺は担ぎ上げられる形で社長に就任することになった。

だが、それは実質的にはお飾り社長。俺がいなくても会社は揺るがない。

 ──そんな状況が、何より嫌だった。

死ぬ気で努力してきたのは、ただ用意された椅子に座るためじゃない。

俺自身の実力で、社長の座を掴み取りたかったのだ。