【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

(き、着せ替え人形じゃないんだから……)

 心の中で突っ込みながらも、頬が自然とゆるむ。

 本当は、こういう服は自分には似合わないと思っていた。

けれど――社長に「完璧だ」と言われた瞬間、初めて鏡の中の自分を少しだけ好きになれた。

 それに、そのワンピースは、どこか懐かしい色合いをしていた。

 昔、お母さんが買ってくれた、小花柄の青いワンピース。

お気に入りだったのに――継母が勝手に処分してしまい、泣きながら一晩を過ごしたことがある。

 だからこそ、今こうしてまた似た色を身にまとえたのが、胸の奥まで嬉しかった。

 気づけば、いったい何着買ったのかわからないほどの洋服たちが、今日中に社長の家へ届けられるらしい。

……怖すぎて値段なんて聞けない。

きっと聞かない方が、心の平穏のためにもいい。

 休憩がてら立ち寄ったカフェでランチをして、そこからは化粧品や日用品、お皿など生活に必要なものを買い揃えた。

 すべて終わる頃には、もう夜になっていた。

高級レストランでディナーのフルコースをいただき、飲み慣れないワインにすっかり酔ってしまった私は、ふわふわとした気分で代行を頼んだ帰り道――。

「夜景でも見てから帰るか」

社長のその一言が嬉しくて、思わず腕にしがみつき、上機嫌で答えてしまった。

「いいですね! 歩いて行きましょう!」