【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 短く言い残すと、さっさと奥の部屋へ姿を消してしまった。

 残された私は、店員たちに囲まれ、流れるように試着室へと連れて行かれる。

「こちらのワンピースはいかがでしょう。どんな場面でも映えますよ」

「合わせるなら、こちらのバッグがぴったりです」

 あれよあれよという間に、私は着せ替え人形のように次々とドレスやスーツを着せられていく。

「まあ、よくお似合いです!」

「スタイルがよろしいから、なんでも着こなしてしまいますね」

 矢継ぎ早に褒められているうちに、気がつけばレジの後ろに、試着済みの洋服が山のように積まれていた。

(ま、まさか……これ、全部……⁉)

 覚えきれないほどの服を試した最後に、私は社長が選んだロイヤルブルーのワンピースに、ネックレスやバッグ、靴までコーディネートされて送り出された。

 奥の応接室に入ると、社長は優雅にコーヒーを飲んでいた。

「おお、終わったか」

 カップを置き、こちらを振り返った社長の瞳が見開かれる。

「いかがでしょう」

 店員が誇らしげに私を示すと、社長は満足げに頷いた。

「完璧だ」

 その一言に胸が熱くなる。