【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 大富豪のスケールはやっぱり違う。

庶民の私には眩しすぎる。

「あの……選ぶとき、遠慮した方がいいですか?」

「その質問するってことは、遠慮する気ゼロだろ」

 口元に笑みを浮かべる社長に、胸の奥がくすぐったくなる。

 そうしてエスコートされて足を踏み入れたのは、高級ブティックだった。

 大きな天窓から差し込む陽光が磨き上げられた床を照らし、店内には街の喧騒を忘れさせるような特別な空気が満ちている。

 上質な生地で仕立てられたドレスやブラウス、壁に並ぶ宝石のようなバッグやアクセサリー。

天井には見事なシャンデリアが輝き、二階へと続く螺旋階段を照らしていた。

 微笑みを浮かべた店員が社長に声をかけ、二人が話している間、私は一人でそっと店内を見てまわる。

(こ、こんな高級店……値札、怖くて見られない……)

 ユニクロやしまむらで十分幸せを感じられる私には、夢のような世界。

けれど、支払うのは社長。余計なことは言えない。

胸の鼓動を抑えながら、私はそっと深呼吸した。

 気づけば店員たちが社長のまわりに集まり、華やかに盛り上がっていた。

 なぜか視線が私に注がれ、皆が目を輝かせている。どういうこと……?

 やがて社長が私のもとへ戻り、トルソーに飾られたロイヤルブルーのワンピースを指さした。

袖が小花柄のレースで縁取られた、上品な一着だ。

「これがいい。あとは頼む」