【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

食事を終えて片付けをしようと立ち上がると、社長に制止される。

「いいからいいから。それより、出かけるから準備しろ」

「え……出かけるんですか? どこへ?」

「昨日は自然に敬語が抜けてたのに、今日はまた敬語なんだな」

「あ、本当だ」

 そう答えた言葉は、自然と砕けた口調になっていて、思わず顔を見合わせて笑ってしまう。

「楽な方でいい。それより早く準備してこい」

「でも……着替えなんて一着しかなくて」

「だからだよ。ほら、着替えてこい」

 だからって、どういう意味だろう。

家に取りに帰れってこと……?

 いやだ。あそこには、もう二度と帰りたくない。

 とはいえ、言われるままに、出かける準備を整えた。

もともと準備に時間はかからないから、あっという間だった。

リビングに行くと、ちょうど片付けが終わったところだった。

食洗機の低い音が響いている。

 社長はエプロンを外し、白いロンTにブラウンのグレンチェックのパンツというシンプルな装いで現れた。

シンプルなはずなのに、どうしてこんなに洗練されて見えるのだろう。

 その上からカジュアルなジャケットを羽織り、指先で車のキーをくるりと回す。

「行くぞ」

 同じことを中途半端な人がすれば格好つけているようにしか見えないのに、社長がすると不思議と自然で絵になってしまう。

 俺様で自己中心的な男は嫌いなはずだった。

なのに、いつの間にか社長にときめいている。

口は悪いけれど、その奥にある優しさに気づいてしまったからかもしれない。