【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 自然に声が漏れて、目を見開く。

本当にお世辞抜きで美味しかった。

「よかった」

 社長は満足そうに微笑み、ゆったりと自分の分を口に運んでいた。

「人に作ってもらえるって……幸せですね」

 思わずこぼれた本音に、社長が顔を上げて私を見つめる。

「いつも家族の分を、お前が作っていたのか?」

「はい。朝も夜も、ずっと私が」

「仕事もあるのに、大変だったろう」

「世の中のお母さんたちは、これに育児まで加わるんですよ。土日もなく働いていて、本当にすごいと思います。私は学生の頃からだから……もう慣れました」

 笑って言ったのに、社長の眉間がきゅっと寄る。

「……いや、嘘です。慣れてなんかいません。ずっと大変でした」

 視線を落とし、フォークを動かす。

笑顔を作れなくなっている自分の顔を見られたくなかった。

 けれど社長は、それ以上なにも言わなかった。

 私たちは黙って食事に集中する。

普通なら気まずくなりそうなのに、不思議と沈黙が心地いい。

 やがてどちらからともなく世間話をはじめ、二人で笑った。

社長と一緒だと、自然と素の自分でいられる。

正直なところ、同世代の女子と二人きりで食事をするほうが、よほど気を遣う。

けれど社長と一緒にいると、自然と肩の力が抜けて、気づけば笑ってしまっている。