【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 長い一日が終わり、ホテルを出る頃には、外はすっかり夜の帳に包まれていた。

正面エントランスで、高城さんが運転する車を待つ。

「はぁ……疲れたけど、楽しかったです!」

「それは良かった」

 無邪気に笑う私を見て、社長は満足そうに目を細めた。

「私、女の子らしい服なんて、ほとんど着たことなかったんです」

「どうしてだ?」

 不思議そうに問う声に、少しだけ胸が痛む。

「あんたには似合わないって言われて……お気に入りの青いワンピースも、すべて捨てられてしまいました」

 過去を口にすると、社長の眉間がきゅっと寄った。

「本当は、女性らしい華やかな服をずっと着てみたかったんです……。けれど、似合わないとずっと言われ続けてきて、大人になっても買う勇気が持てませんでした」

「――誰よりも似合うと思う」

「私に社交辞令はいりませんよ」

 苦笑しながら首を振ると、社長は真剣な顔で言葉を重ねてきた。

「俺はお世辞も社交辞令も言わない。さっきのウェディングドレス姿……息を呑むほど綺麗だった。あんな花嫁と結婚できるなんて、俺はなんて幸せ者なんだろうって、本気で思った」

 冗談には聞こえなかった。

真っ直ぐに目を見つめられて、胸の奥まで熱くなる。

まるで告白のようで、言葉が出ない。

「あ……えっと……」

 戸惑う私に、社長は一歩近づき、低く囁いた。

「捺美、俺は――」