【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 コルセットを締め、ドレスの重みを身に纏う。

実際に袖を通してみると、ラックに掛けられていたときよりもずっと素敵に映った。

サイズも驚くほどぴたりと合っていて、まるで私のために仕立てられたオーダーメイドのようだった。

 正面から見れば清楚で可憐。

けれど背中は大胆に開き、腰から流れるリボンのようなトレーンが可愛らしさと華やかさを同時に添えている。

 胸は高鳴り、足元はふわりと浮くようで――まるで憧れ続けた物語の中に迷い込んだみたい。

 試着室を出た瞬間、社長が固まった。

 思わず照れ隠しに微笑むと、彼は頬を真っ赤に染め、大きな手で口元を覆う。

「……想像以上だ。言葉を失うとは、こういうことなんだな」

コンシェルジュも思わず息を飲み、「本当にお美しいですね」と感嘆の声を洩らした。

ふたりの反応に、私の頬も熱く染まっていった。

「このドレスにします。もう他のものは目に入らないほど、気に入りました」

「では、髪型と装飾品を決めましょう」

 そうして、私の髪は上品なシニヨンにまとめられ、ショーケースで一際輝いていたティアラとネックレスが選ばれた。

その後は試食会へ。

披露宴は行わないものの、親族をもてなすパーティ用に料理を決めていく。

デザートの美味しさに感激して笑顔を見せると、急きょデザートビュッフェも追加されることになった。

 気づけば、憂鬱な気持ちはすっかり消えていた。

楽しくて、心から笑って――本当に、夢のような時間だった。