【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

コンシェルジュに聞かせるための芝居では決してない。

「これ、素敵……」

 輝く絹糸を幾重にも重ねたスカートは、ふんわりと広がりながら光を受けて淡く輝く。

胸元には繊細なスパンコールが星屑のように散りばめられ、動くたびにきらめきを放った。

背中は大胆にV字にカットされ、しなやかなラインを引き立てる。

腰から流れるトレーンは大きなリボンのように広がり、まるで物語のお姫様がまとうドレスのような豪奢さを漂わせていた。

 一目惚れだった。憧れがすべて詰まった、まさに夢のような一着。

「このドレスを試着してみるか?」

 背後からそっと抱きしめるように腕を回され、頭の上に社長の顎が乗る。

至近距離で囁かれる声に、心臓が跳ねた。

「……うん」

 こんな素敵なドレスをこれから身にまとえると思うと、胸が高鳴って仕方ない。

それに加えて、社長がやけに近くにいるせいで、さらに心臓が早鐘を打つ。

頬が熱く染まっているのは、ドレスへの興奮のせいなのか、それとも社長への意識のせいなのか──おそらくその両方だ。