【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 白を基調に、壁面には淡い桃色の小花があしらわれている。

天井から下がるシャンデリアは輝きを放ち、ガラスのショーケースには宝石のようなティアラやネックレスが並んでいた。

 ふかふかのソファに腰を下ろすと、芳醇な香りを漂わせる紅茶が運ばれてくる。

 コンシェルジュは黒のスーツをきりりと着こなし、髪を夜会巻きにまとめている。

話し方も立ち居振る舞いも洗練され、ベテランらしい落ち着きを感じさせた。

 社長とコンシェルジュが熱心に話し合う姿を横目に、私はただぼんやりとその光景を眺めていた。

 夢のような世界。こんな素敵な場所で、日本中の女性が憧れる御曹司と結婚式を挙げる――普通なら狂喜してもおかしくない。

 けれど私の心は、どうしてか晴れなかった。

 嬉しくないわけではない。

 白を基調にしたサロンはロココ調の装飾で彩られ、青い小花模様のカップに注がれた紅茶は見ているだけで心が浮き立つ。

 自分に似合うかどうかは別として、可愛いものに囲まれると胸は自然と高鳴った。

 ――それでも、素直に喜んでいいのかどうか迷ってしまう。

自分の結婚式なのに、自分のものではないような、不思議に置き去りにされたような気持ちもあって。

「それでは、ウェディングドレスを選んでいただきましょう」