車が向かった先は、都内屈指の最高級ホテルだった。
広々とした敷地には四季折々の花々が咲き誇る庭園が広がり、中央では優美な噴水が水音を響かせている。
白亜の外壁を持つ建物は空に向かってそびえ立ち、繊細な装飾が施され、気品を漂わせていた。
一度は泊まってみたいと憧れていた場所。
まさか、自分の結婚式をここで挙げることになるなんて――人生は本当に何が起こるかわからない。
「いいか。これからは俺に敬語は使うな。結婚するのに、上司と部下みたいな会話じゃプランナーに怪しまれるだろ」
「えっ、い、今から!?」
「そうそう、その調子」
満足げに笑う社長に、思わず心臓が跳ねる。
敬語をやめるなんて無理だと思っていたのに、気づけば自然と砕けた口調になっていた。
普段から社長が友人のように話しかけてくるせいで、つられてしまったのかもしれない。
正面玄関に車が停まると、すでにスタッフが待機していた。
高城さんはホテルオーナーと話があるらしく、ここで別れることに。
私たちはブライダルコンシェルジュに案内され、ブライダルサロンへと向かった。
重厚な扉を開けた瞬間、息をのむ。



