【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「駐車場まででいいと断られた。それより早く準備を進めろと一喝されてな」

 社長は涼しい顔で言い放ち、こちらに視線を向けた。

「……下に行くのか?」

「はい。式場の打ち合わせに向かうところです」

「おいおい、俺を置いていくなよ」

「社長もご一緒されますか?」

「当然だろ。俺の結婚式なんだから」

 そのまま自然に、私と高城さんは社長と共にエレベーターへ。

「日程、もっと早められないか」

「ホテルと交渉してみます。ただ参列者の都合もありますので」

「身内だけでいい。披露宴は必要ない」

「それなら、大幅に短縮できるかと。すぐ交渉してみます」

「頼む」

 二人の会話は淡々と進んでいく。まるで大きな取引の段取りのように。

 そのやり取りを横で聞きながら、胸の奥にぽっかりと空洞が広がっていく。

 ――私には、何も決める権利がないのだろうか。

 自分の結婚式なのに。

 いや、これはあくまで「仕事」なのだ。

感情を挟まず、流れに身を委ねるのが正解。

 そう言い聞かせても、不安は消えない。

(……本当に、これでいいの?)

 表示が切り替わる液晶をただ見つめながら、固く拳を握りしめた。