【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 真剣な眼差しで諭され、背筋が凍る。

 これは、私情とは別次元の問題。

たとえ一社員でも、株価に関わるプロジェクトに携わる以上、最優先にすべきことはひとつ――。

「……はい。すみません。結婚式の準備に、全力を尽くします」

 口にした瞬間、肩に重みがのしかかる。

もう逃れられない責任だと、自分に言い聞かせた。

「よろしくお願いいたしますね」

 高城さんは安堵したように微笑んだ。

 けれど、口にしてしまったものの、本当にこれでいいのだろうか。

 会社の利益を考えるなら当然の優先順位なのかもしれない。

でも――結婚のあと、私はどんな立場でこの会社に戻るのだろう。

 社長の妻、あるいは元妻として扱われ、仕事がやりづらくなって……最悪、退職に追い込まれることになったら。

 それは、私にとって損でしかない。

(……本当に、このまま進めてしまっていいの?)

 不安を抱えたまま、それでも『辞退します』と言える状況ではなかった。

「とりあえず、式場へ行きましょう。決めておくことが山ほどありますから」

 高城さんがそう言って、エレベーターの下ボタンを押す。

 扉が開いた瞬間、そこに立っていたのは社長だった。

「病院まで送るのではなかったのですか?」

 驚いたように高城さんが問いかける。