【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 毅然とした言葉に、おじい様の目がわずかに見開かれる。

すると、口元に笑みが浮かんだ。

「……なるほど。この子か」

 ぽつりと呟いたのち、私へと顔を向ける。

「名前は?」

「……工藤捺美と申します」

「捺美さんか。大翔を、頼んだよ」

「は……はい」

 胸が痛む。これは離婚前提の契約結婚。

昨日出会ったばかりで、お互いのことを何一つ知らないのに。

愛だってないのに――。

「結婚相手が決まったなら、次は式だな。一ヵ月以内に挙げてくれ。それまでは……しぶとく生き延びられる気がしてきたわい」

 おじい様は愉快そうに笑い声を上げる。

余命を告げられた人とは思えないほど、生命力に満ちていた。

「もちろんです。最短で挙げます。すでに関係各所には通知済みです。な、高城」

「はい。会場もおさえました。あとは詳細を決めるだけです」

(えっ……!? そんな話、いつの間に!)

 声をあげたいのに、とても口を挟める空気ではなく、必死に堪える。

「うむ、よろしい。最短で頼むぞ」

 おじい様が満足げに頷き、部屋を後にしようとする。

社長はすぐ立ち上がり、その車椅子の後ろに回った。

「病院までお送りします」

「うむ」

「高城、あとは頼んだぞ」

「承知いたしました」

 昨夜は「じいちゃんが死ぬ前に」なんて不謹慎な言い方をしていたのに――目の前で交わされる言葉からは、厳然とした上下関係が伝わってきた。

 社長が急いで結婚相手を探そうとする理由が、ようやく胸に落ちる。