【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 目が合った瞬間、彼はにこやかに笑みを浮かべ、軽く手招きをした。

印刷した資料を抱えたまま近づくと、落ち着いた声で告げられる。

「相談役が来社されました。――社長のおじい様です」

「えっ……⁉」

 驚きに息をのむ。思わず声を潜めて問い返した。

「お、おじい様って……危篤だったのでは……?」

「危篤ではありません。ただ……余命の宣告は受けています。ですが、社長が結婚相手を決めたと聞き、病院を抜け出して駆けつけてこられたのです。つまり――あなたに会うために」

 胸がどくんと跳ねた。

 結婚するというのは、そういうこと。

わかってはいたけれど、あまりの急展開に気持ちが追いつかない。

「……それは、やっぱりお会いしないとまずいですよね?」

 一応確認すると、高城さんはにこやかに微笑んだまま、はっきり告げた。

「まずいですね」

 逃げ場はない。これは断ることのできない案件だ。

「わかりました、すぐに伺います」

「本部長には、私から話を通しておきますので」

 そう言って高城さんは本部長の席へ向かった。

 私は項垂れるようにして、佐伯さんのデスクに立ち寄る。

「お待たせしました。頼まれていた資料です」

 差し出すと、佐伯さんは真剣な表情で目を通した。