【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「社長にとっては、営業事務なんて大した仕事じゃないと思われるかもしれません。でも私は、誇りを持って働いているんです。一生懸命に」

 口にしてから、少しきつい言い方をしてしまったと気づく。

けれど社長も同じだったのだろう。

軽口がまずかったと察したのか、トーンを落として言った。

「……それはわかっている。忙しいなら、戻っていい」

 社長が静かに頭を下げた。

その姿に胸がちくりと痛む。

 私もつい、苛立ちに任せて言葉を荒げてしまった。

朝から役員たちの前に立たされて、社長室にまで連れてこられて……。

職場中で噂になっていることを思うと、心がささくれてしまったのだ。

「こちらこそ……言い過ぎました。失礼します。仕事がありますので」

 儀礼的に一礼し、社長室をあとにした。

 ――優しいからといって、つい甘えてしまう。

社長に対してなんて態度だろう。そう思いながらも、彼のわがままに付き合っている余裕はなかった。

 営業一課に戻ると、案の定、同僚たちの視線がちらちらと突き刺さる。

 朝から派手に社長に連れられていたのだから、噂にならないはずがない。

 平然を装いながらデスクに腰を下ろし、パソコンを開いた。

昨日までは考えもしなかった現実に、息が詰まりそうになる。