「いや、別に……」

 あれ? なんだろ、この反応。重すぎて引いたとか?

 申し訳なさすぎる!

「それだけ疲れてたってことだろ。もっと寝ていれば良かったのに」

「いつもこの時間に起きてるんです。家族の朝ご飯の準備とか色々やることが多いので」

 その言葉に、社長は私の顔をじっと見つめた。

「仕事しているのに、家族の朝ご飯をお前が作っていたのか?」

「学生の時からなんで、もう慣れてます」

「遅くまで仕事して、朝早くから家事もして。体壊すぞ」

「大丈夫です! 見ましたでしょ、私の走りっぷり。体力と根性には自信があるんです!」

 胸を張って言うと、社長は眉間を寄せた。

「無理しすぎだ。お前はいつも昔から……」

「昔から?」

 私が小首を傾げると、社長はハッとしたように視線を逸らした。

「なんでもない。着替えてくるからゆっくりしてろ」

 社長はそう言って、リビングから出て行った。

 勝手に使っていいなんて、社長は太っ腹だなぁ。神経質なタイプじゃなくて良かった。

 社長の言葉に甘えて、キッチンの棚を開けていく。生活する上でどこになにがあるのか知ることは大切だ。

 そんなこんなしていると、いつものビシっと決めたスーツ姿の社長が戻ってきて、会社に行くことになった。