【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

無情にも後部座席のドアが開き、役員たちの視線が一斉に注がれる。

もう逃げられないし、隠れることもできない。

驚きの表情を浮かべる彼らに向けて小さく微笑み、そっと車を降りた。

 すぐ隣に立った社長が、当然のように腰に手を添えてエスコートする。

(ち、近い……! やめてください!)

 心の中で悲鳴を上げても、振り払うことなどできるはずもない。

「おはようございます!」

 役員たちが一斉に頭を下げる。

まるで極道映画の一場面のような光景に、背筋が強張った。

 なかでも営業本部長は、目を見開いて私を凝視している。

 他の役員はせいぜい顔見知り程度だが、本部長は私の名前まで知っている。

『どうして工藤君がここに?』――そんな言葉が表情にありありと刻まれていて、胸がひやりとした。

 けれど社長はご満悦の笑みを浮かべたまま、私の腰に手を回し、堂々と会社の中へ。

 そしてそのまま、なぜか社長室へと通されてしまった。

 最上階のワンフロア――一介の社員には足を踏み入れることすら許されない空間。

 そこに広がっていたのは、ドラマのワンシーンのように華やかで洗練された世界だった。