【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 私も社長と並んで後部座席に乗り込み、高城さんが用意してくれたベーグルサンドを口にした。

シャキシャキの野菜がたっぷり挟まれていて、朝から贅沢な気分だ。

隣の社長は食べずにコーヒーだけを口にしている。

 やっぱり朝は食べない派なのだろうか。

私が作ったら迷惑になるのかもしれない。

同じ家で暮らすのに、彼の生活スタイルをなにも知らないのだと改めて気づく。

……こんな状態で、大丈夫だろうか。

 会社に到着すると、正面玄関にはずらりと役員の方々が並び、社長の到着を待っていた。

 社員は裏口から入るのが常識。

毎朝こんな光景が繰り広げられていたなんて、夢にも思わなかった。

「ちょ、ちょっと……これ、私まで一緒に降りたらまずいんじゃないですか?」

 顔が真っ青になる私に、社長は余裕の笑みを浮かべる。

「気にするな。俺たちは結婚するんだから」

「いや、だからって……! 心の準備が!」

「なにを言っている。もう一晩を共にした仲だろう?」

社長の意味深な言葉に、運転席の高城さんが思わず驚きの表情で振り返る。

咄嗟に私は弁明した。

「ちょっと! 誤解を招くようなこと言わないでください! 別室でしたから!」

「部屋は別々だが、俺の家だ」

 社長はなぜか勝ち誇ったように笑みを浮かべ、高城さんへ視線を送る。

すると高城さんも咎めることなく、むしろ微笑ましげにアイコンタクトを返した。

二人のやりとりの意味が分からず、胸の奥がざわついた。