……携帯のアラーム音に、深い眠りから引き戻される。
朝だ。洗濯をして、ご飯を作って、リビングに掃除機を――。
けれど目を開けた先に広がっていたのは、見慣れない光景だった。
ふかふかのベッドに、シックな壁紙。
(あれ……私、ここは……)
誰もいない部屋で、記憶をたぐる。
そうだ。昨日――いや、今日の未明に。
私は社長の家に来て、お風呂に入って……スーツの仕上がりを待っているうちに眠ってしまったのだ。
壁に視線を向けると、そこにはしわひとつなく整えられたスーツがハンガーにかけられていた。
本当にクリーニングに出したかのように、ぴんと美しい仕上がりで。
あれ……私、本当に記憶がない。
たしか椅子に座ったまま眠ってしまったはず。ということは、ベッドに運んでくれたのは……社長?
胸の奥が一気に熱くなる。初日から、なんてこと。
お酒を飲んだわけでもないのに、ぐっすり眠り込んでしまうなんて。
連日の疲れに加えて、深夜の逃走劇と突然の結婚。
そして初日からの同棲。心身ともに限界だったのだろう。
……それでも、抱きかかえられたときくらい起きなさいよ、私。



