【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 化粧台の引き出しを開ければ、メイク落としや化粧水などのアメニティが一式そろっていた。

急なお泊まりでも不自由しない、まるで高級ホテルのような徹底ぶりだ。

……これは、女性を迎え入れるのに慣れているな。

「そして、こっちは風呂場と洗面所だ。洗濯乾燥機があるから少量ならすぐに乾くし、スーツ類はこっちの除菌用低温乾燥機を使えばクリーニングに出したみたいになる」

 思わず感嘆の息が漏れる。

コンビニで色々買わなきゃと思っていたけれど、その必要はまったくなさそうだ。

「俺は朝に風呂に入るから、お前はゆっくり浸かって休め」

「……なんだか、至れり尽くせりしていただいてすみません」

「なにを言っている。俺の嫁になるんだから、堂々としていればいい」

 そう言って、社長は柔らかく笑いながら私の頭をぽんと撫でた。

 ――頭ポン、された。

 驚くほど自然で、嫌味の欠片もない仕草に、不覚にも胸がきゅっと鳴る。

 女心を掴むような甘い行為も、この人がすると不思議といやらしさがなくて……むしろ心地いい。

 もし相手が普通の男性だったら……「やめてください、それはセクハラです」なんて言っていたに違いない。