【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「なぜ俺がそんな約束をしなければならない。言っておくが、俺に抱かれたいと願う女など、いくらでもいる。……うぬぼれるな」

 冷たい言葉に、胸がちくりと痛んだ。

「……はい。すみませんでした」

どうして私は謝っているのだろう。

「俺に抱かれたいと懇願する女は山ほどいる」と言われて、心に浮かんだのは『でしょうね』という妙に納得した感想だった。

 これだけ顔を近づけられて、不快どころか鼓動が高鳴ってしまうなんて。

恋愛感情なんてないはずなのに。

 ただ整っているだけじゃない。

纏う空気ごと惹きつけるような圧倒的な存在感――まるで体中から色気を放っているかのようだ。

 やがて社長は壁から手を離し、ようやく息を吸えるようになった。

 顔立ちのいい人にときめいたりはしない……はずなのに。

けれど、最上位にいるような特別な人は、近くに寄るだけで心を揺さぶる何かを持っているのだろうか。

ふと先ほど、社長が凄みをきかせて言い放った言葉を思い返す。

冷静になってみると、そこに妙な違和感が残っていた。

 あれ? もしかして私は、自然な流れで「約束しない」方向に持っていかれた……?

 いや、そんなことを口にしたら、また「うぬぼれるな」と叱られそうだ。