これから同棲することになっているから、顔は覚えてもらった方がいいのだけど。

 恥ずかしくないのかなこの人ってくらい堂々としているし、もの凄い満足気なのなんで?

 ホテルのロビーのような豪華なエントランスを通り、エレベーターに乗ると、社長は最上階のボタンを押した。

 なんだか急に不安になってきた。密室のエレベーター内に二人きりだと、その緊張感が増す。

 大丈夫なんだろうか。ほぼ初対面みたいな相手と結婚。そして同棲。逃げるなら、今しかないかもしれない。

「最上階は数戸しかない特別なペントハウス仕様となっている。部屋数も多いから住むのに不自由はないと思う」

 さすがは社長。一人暮らしなのにペントハウスですか。

「へえ……凄いですね」

 緊張が高まりすぎて、他人事みたいな返事になってしまった。これから、私も住むというのに。