【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 ためらう私に気づいたのか、「さっさと入れ」と低い声で促され、反射的に足が動いてしまった。

背後で扉が閉まり、重厚な音が響く。

 だだっ広い玄関に立ち尽くしながら、私は覚悟を決めて社長に向き直った。

「あの……今、ここで約束していただけますか?」

 思わぬ反撃に、社長の眉がぴくりと動く。

「……約束?」

 そのまま、ぐっと距離を詰められる。

息が触れそうなほど近づかれ、体がこわばった。

けれど、退いてはいけない。

「私に……手を出さないって」

 勢いで口にしたものの、後半はしぼむように小さくなってしまった。

頬が熱くなり、恥ずかしさに思わず視線を逸らす。

 次の瞬間、背後の壁に大きな音が響く。

片腕で遮られ、社長が私を閉じ込める。

「……ずいぶん自信があるんだな。一緒に住めば、俺がお前に触れずにはいられないほど、自分が魅力的だとでも思っているのか?」

「そ、そういう意味じゃなくて……確認というか、その……」


 逃げ場のない壁ドン。

怒っているのかもしれないのに、至近距離の整った顔に心臓は狂ったように脈打つ。

恐怖なのか、ときめきなのか、自分でもわからない。

……とにかく顔が近い。