港区の中でも限られた人しか住めない、超高級住宅街。
都内に住んでいながら、足を踏み入れることすらなかった世界に、高級車は迷いなく進んでいく。
普通の車では場違いに思えてしまうほどの、絵に描いたような邸宅街だ。
その一角にそびえるのは、大使館か歴史的建造物を思わせる低層の高級マンション。
東京の真ん中とは思えないほど豊かな緑に囲まれている。
深夜にもかかわらず、まるでイルミネーションのように明かりがきらめき、白い石造りの外観と豪奢な装飾が、圧倒的な存在感を放っていた。
エントランスには植栽が美しく配され、扉の向こうではコンシェルジュが待機している。
車のドアはすでに開いている。
けれど足がすくんで降りられないでいると、先に降りていた社長が覗き込んできた。
「おい、さっさと降りろ」
低い声に胸が跳ねる。
……やっぱりこの人、怖い。
でも、これから私の夫になる人なのだ。
思わず睨み返しながらも、観念して車を降りた。
「それではまた、明日お迎えに上がります」
運転手さんが恭しく頭を下げると、社長は片手を軽く挙げて返事をする。
そして、ためらう私の腰に当然のように手を回し、エスコートするようにエントランスへと導いた。
まるでコンシェルジュに見せつけるみたいに──『俺の女だ』とでも言うような仕草。
いや、確かに今の私は社長の婚約者だけれど……。
都内に住んでいながら、足を踏み入れることすらなかった世界に、高級車は迷いなく進んでいく。
普通の車では場違いに思えてしまうほどの、絵に描いたような邸宅街だ。
その一角にそびえるのは、大使館か歴史的建造物を思わせる低層の高級マンション。
東京の真ん中とは思えないほど豊かな緑に囲まれている。
深夜にもかかわらず、まるでイルミネーションのように明かりがきらめき、白い石造りの外観と豪奢な装飾が、圧倒的な存在感を放っていた。
エントランスには植栽が美しく配され、扉の向こうではコンシェルジュが待機している。
車のドアはすでに開いている。
けれど足がすくんで降りられないでいると、先に降りていた社長が覗き込んできた。
「おい、さっさと降りろ」
低い声に胸が跳ねる。
……やっぱりこの人、怖い。
でも、これから私の夫になる人なのだ。
思わず睨み返しながらも、観念して車を降りた。
「それではまた、明日お迎えに上がります」
運転手さんが恭しく頭を下げると、社長は片手を軽く挙げて返事をする。
そして、ためらう私の腰に当然のように手を回し、エスコートするようにエントランスへと導いた。
まるでコンシェルジュに見せつけるみたいに──『俺の女だ』とでも言うような仕草。
いや、確かに今の私は社長の婚約者だけれど……。



