【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「さて。結婚相手も決まったし、式までは急ピッチで進めないとな。じいちゃんが死ぬ前に」

 ……なんて不謹慎な。思わず横目で睨みつける。

「どちらに向かいますか? ただいま社長宅へ向かっておりますが、工藤様のご自宅にお送りしますか?」

 運転手がバックミラー越しに問いかけてきた。

「工藤……様?」

 会話の中で名前を覚えてくれたのはわかる。

けれど、様とつけられるのは妙な違和感だ。

「ええ。社長の奥様になられる方ですから」

 その言葉に、現実感がじわりと押し寄せる。

 ほぼ初対面に近い相手と結婚を決めるなんて──社長はどうかしている。

でも、承諾した私も十分どうかしている。

「いや、俺の家でいい」

「……え?」

 思わず社長を凝視した。

「結婚するんだ。一緒に住んだ方がいいだろう」

 至極当然といった顔で言い放つ。

「い、いや、それは結婚してからでいいのでは……?」

「打ち合わせもある。別々に住んでいたら面倒だ」