【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

　ようやく意味を察したのか、社長は赤くなっている私を見て、気まずそうに視線を逸らした。

「あ……まあ、それも……。別に無理強いするようなことじゃない」

「……つまり、本当にただ、結婚さえすればいいってことですか？」

　思わず身を乗り出して問い詰めると、社長は目を泳がせながら「あ、ああ」と頷いた。

「……いいでしょう。結婚、受けます。互いの利益のために」

「随分強気だな。見た目によらず、度胸があるじゃないか」

「こう見えて、苦労してきてますので」

　少し誇らしげに笑うと、社長は呆れたように口元を緩め、すっと手を差し出してきた。

「……よろしくな。互いの利益のために」

　その手を握り返した瞬間、胸の奥が不思議に熱くなる。

　──結婚を決めた、その契約の証。

　そして、これが私と社長が初めて触れ合った瞬間だった。