「辛さを乗り越えてこそ、本物の夫婦になれるなら、今回の出来事こそ本物の夫婦になれるかどうかが試されているんじゃないか」

「社長の言葉に迂闊にも感動してしまう日がくるとは」

「お前、俺をなんだと思っているんだ?」

 高城は悪戯気に微笑み、仕事モードに入るときの真剣な顔に変わった。

「この問題を片付けないことには、社長の仕事の効率が激落ちです。捺美さんにはなんとか社長の元に戻っていただいて、再び最強モードになってもらわないと、会社の利益に関わります。強いては私のボーナスにまで……」

「うん、お前はそういう奴だよ」

 乗り越えてやろうじゃないか。どんなに高い壁だとしても。

 だんだんやる気がみなぎってきた。

捺美を実家の呪縛から救い出す。

そして、捺美の心の傷までも俺が癒してみせる。

 待ってろ、捺美。俺が救い出してやる。