【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

こんなに時間がかかったのも無理はない。

見つけたのは、九州の田舎町だった。

捺美のお父さんは大手工場で住み込みの仕事をしていて、日焼けし、筋肉もついて、別人のような顔つきになっていた。

 最初は下働きばかりで肉体労働が主だったらしい。

だが真面目な働きぶりが認められ、今では現場リーダーに抜擢されているという。

仲間もでき、充実しているのだと話していた。

 それでも彼は「ここにいることは誰にも言わないでくれ。捺美にも伝えないでほしい」と言った。

悲しげな表情で、「もう捺美を苦しめたくない」と。

 きっと彼もまた、長い間苦しみ続けてきたのだろう。

 捺美のお父さんに会う前、俺は継母と継姉と直接対決していたから、あいつらの異常さは骨身に染みている。

言葉で通じる相手ではないし、会話すら成り立たなかった。

 だからこそ、彼は自分の人生を歩き出したのだと思う。

もう二度と、捺美を傷つけたりはしないだろう。

 いつか、彼女に伝えたい。

――お父さんは、今、頑張っているよ、と。