【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「捺美がいるだけで、違う家に帰ってきたみたいだ」

 大翔が零すように呟く。

「どう違うの?」

「温かみを感じるんだ。家だって、捺美が戻ってきて喜んでるよ」

 そうだったらいいな、と思う。同時に、あの日いきなり出て行ってしまったことを申し訳なくも感じた。

「ただいま」

 部屋全体に向かって声をかける。

ここが、私の帰る場所。

 笑顔で家に挨拶する私を見て、大翔の瞳がほんのり赤く潤んでいた。

「……捺美、おかえり」

 大翔は私をぎゅっと抱きしめた。

腕に込められた力が、これまでの不安や心配の深さを物語っている。

たくさん傷つけ、たくさん心配をかけてしまったのに──それでも大翔は、変わらず無条件の愛で包み込んでくれる。

 あふれるほどの大好きな気持ちが胸を満たし、心が震える。

込み上げる涙をもう止めることはできなかった。

 もう二度と出て行くことはない。大翔の側を、離れない。

「ただいま……大翔」
                                     




【完】