【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「私は実家には戻らない。どうしても戻れと言われるのなら……私は死を選ぶ。それほどに、私にとって実家は地獄だったの」

「死を選ぶなんて、大げさな……」

 お父さんは私の言葉を鼻で笑った。

「本当よ。私、今日……死ぬつもりで家を出たの。死にたくなんてなかったけど、もうそれしか逃れる道がないと絶望してさまよっていた。――そんな私を、大翔が救ってくれたの」

 その告白に、高城さんは息を呑み、お父さんは口を開いたまま固まっていた。

「事実です」

 大翔が毅然とした声で続ける。

「僭越ながら申し上げますが……お父さまは、捺美さんの心の傷に目を向けるべきでした」

 お父さんは両手を組み合わせ、視線をさまよわせながら俯いた。

「だから私は――もう二度と実家には戻らない」

 はっきりと告げると、お父さんは青ざめた顔のまま、何も返せなかった。

「さようなら、お父さん。私はもう……お父さんには会わない」

 立ち上がって背を向ける。

寄り添うように大翔がついてきた。

(言えた……!)

震える足で社長室を出た瞬間、私はようやく長い呪縛から解き放たれたのだった。