【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

駅前のロータリーを見渡すが、手がかりは何一つない。

ここ八王子は、捺美がかつて暮らしていた街。

昔の家に向かったのか、それとも別の場所か──見当もつかなかった。

とにかくタクシーに乗り込み、行き先を告げる。

捺美が住んでいた家の住所は知らない。

だが、俺にはひとつだけ思い当たる場所がある。

彼女がそこにいる保証はない。

それでも──「そこへ行け」と、〝昔の俺〟が背中を押していた。

あの日、俺は死に場所を求めて八王子に来ていた。

どうして八王子だったのか。理由は単純だ。電車の終着駅が、たまたま八王子だっただけ。

駅に降り立ち、携帯で「自殺 場所」と検索した。

そこで偶然出てきたのが滝山城址だった。歴史にも土地にも縁はない。

ただ、検索に引っかかったというだけの場所。

山道の階段を上がると、途端に空気が変わった。

背筋を撫でるような寒気に、死者が手招きしているような錯覚を覚えて身震いする。

──おそらく、事前に読んだ「滝山城址は心霊スポット」という記事が頭に残っていたのだろう。