【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 身体は宙に投げ出され、かろうじてその手に支えられているだけだ。

「くっ……!」

 男の人が顔を歪め、必死に私を引き上げようとしている。

 その横顔を見た瞬間、心臓が大きく跳ねた。

 ――知っている。私が知っている人。

 さっき走馬灯で思い出した、あの男の子……。

「……大翔」

 私が驚きの声を漏らすと、大翔は額に汗を滲ませながらも、不敵な笑みを浮かべた。

「捺美、助けに来た」

 力強いその声とともに、大翔は私の身体をぐいっと引き上げる。

荒々しくも確かな腕に抱え込まれるようにして、私は崖の上へと救い出された。

「怪我はないか?」

 大翔は息を切らしながらも、真剣な眼差しで私の身体を確かめる。

「どうして……大翔がここに……?」

 呆然と彼を見上げる。夢でも見ているのではないかと思うほど現実味がない。

「言っただろう。助けに来たって」

「でも、どうしてここにいるって……?」

「決まってる。ここは、俺たちが初めて出会った場所だからな」

 まるで当然のことのように告げられ、私は息を呑んだ。

 そして、ようやく思い出す。

あの日――大翔は死に場所を探して、この崖にやって来ていたのだ。