少しずつ、良い方向に変わっている気がしたのに。

 私は変われるって思っていたのに。

 未来は明るいと思って信じていたのに。

 ランチはとても楽しかった。

社長夫人だからといって変に気を使われることもないし、余計な詮索も余計な嫉妬もなにもない。

 もっと人を遮断せず、心を開いていこうと思ったのに。

 素敵な一日になりそうだったのに。

 会社に帰る途中、急に帽子を目深にかぶった人物に、呼び止められた。

 その瞬間から、世界は暗く淀んでいく――