【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

　心臓が跳ね上がり、思わず幽霊だと決めつけて叫び声をあげる。

逃げようとした瞬間、足がもつれて体勢を崩し、世界がぐらりと傾いた。

（落ちる……！）

　視界がスローモーションのように歪み、走馬灯のように人生の出来事が一枚ずつ写真になって目の前を流れていく。

　その背後では、誰かが必死に私の名を呼びながら駆け寄ってくる声がした。

　写真の中の一枚に、一人の男の子が映る。

色白で、女の子のように整った顔立ち。

鋭い目つきは理知的で、まるで世の中すべてを恨んでいるような暗い色を宿していた。

（そういえばこの子、口も悪いし態度も大きくて、生意気だった。でも……笑うと、とても優しい〝お兄さん〟だった）

　どうして最期に思い出すのが彼なのだろう。

そう考えながら、私はゆっくりと崖の下へ落ちていった。

意外なほど冷静で、ただあっさりと死ねればいいと願っていた。

　その瞬間、腕に鋭い衝撃が走った。がしりと強く手を掴まれる。