【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「それは、お前次第だな」

「……私次第?」

 思わずまばたきを繰り返した。

 クビにはならないだろうと高をくくっていたのに、まさかの最悪の結末が?

「実は、昨日中に──俺にはある重大なミッションが課せられていた」

「は、はあ……」

 運転席の男性が、バックミラー越しに興味津々でこちらを見ているのがわかった。

「俺は昨日のうちに、結婚相手を見つけなければならなかった」

「へえ……それは大変ですね」

──正直、社長の結婚事情などどうでもよかった。

いまの私にとって重要なのは、クビになるのか、それとも踏みとどまれるのか。

人生の岐路に立たされている、その一点だけだ。

「正直、もう無理だと諦めていた」

「そうですか」

だからどうしたの。……で、私の処遇は?

「だが──期限ぎりぎりの時間に、お前が現れた」

 ……え? ちょっと待って。まさかこの流れ、私が関係してくる?

「お前に決めた」

「……はい?」

「俺と結婚しろ」

「はあっ⁉」

 思わず大声を上げてしまった。眉間に皺が寄るのを自覚する。

 まずい、素が出た。相手は社長だというのに。

 でも……いや、誰だって取り乱すでしょう⁉

 いきなり結婚しろだなんて。

「ああ、そうきましたか!」

 運転席の男性は愉快そうにハンドルを軽く叩いた。