【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 心配だった。けれど、だからといって簡単に戻るわけにはいかなかった。

 実家を出ることこそが、私の最大の目標だったし、大翔という夫の存在もあった。

 それでも「関係ない」と割り切ることもできなかった。

あのときの継姉の声は、仕事中も、大翔と一緒にいるときも、頭の中で何度も反響し続けていた。

 執拗に追いかけてくる継姉の魂胆には怒りしかなかった。

ここで戻れば、彼女たちの思うつぼだ──そうわかっていたのに。

 数日後、父が突然、私の前に現れた。

 会社帰り、タクシーを待つ私に向かって。

『捺美』

『お父さん……。倒れたって聞いたけど、本当に大丈夫なの?』

『倒れてはいない。ただ、少し体調が悪いだけだ』

 そう言う父の顔は青白く、以前よりさらにやつれて見えた。

『あの、私……』

 本当は伝えたかった。結婚したこと。そして今は幸せに暮らしていること。

 けれど父は、私の言葉をさえぎって告げた。

『捺美、帰ってきなさい』

 その一言は、必死に逃れようとしていた私を鎖のように絡め取り、心を押し潰した。