【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「でもあの会社に戻ったら、また捺美が出て行くかもしれないじゃない。警備が厳重で、次は会うこともできなくなるかもしれない」

「そうね。見つけ出すまでに苦労したもの。やっぱり辞めてもらうしかないわね。退職金だっていくらか出るでしょうし」

 勝手に決められていく未来。

私がどんな思いで働き続けてきたか、知りもしないくせに。

 たとえ社長と離婚して社内に居づらくなっても、絶対に辞めないと心に誓っていた。

私は私のために頑張っていたのだ。

 込み上げる怒りに頭が熱くなり、吐き気がこみ上げる。

慌てて洗面所に駆け込み、水を流すが、口から出てくるのは唾液だけ。

ろくに食事も取っていなかったのだ。

 鏡に映った自分の目は真っ赤に充血していた。

悔しさで拳を握りしめると、皮膚が裂けて血が滲む。

 声を上げて泣き叫びたい衝動に駆られたが、そんなことをすれば父が困ってしまう。

 血のついた手のひらを口元に押し当て、嗚咽が漏れないように必死に堪えながら、その場に崩れ落ちた。

(助けて……誰か、助けて……)

 どれほど心の中で叫んでも、誰も手を差し伸べてはくれない。