【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 先生は顔を上げ、真剣なまなざしで俺を見た。

「それでも、克服できる人もいます。大きな傷を糧にして、より逞しく生きる方もいる。そのためには本人の努力はもちろん、支える存在が不可欠です。……あなたにその覚悟はありますか?」

「あります。捺美を失う方が、俺にはよほど辛い」

 即答した俺に向けられたのは、先生の静かな慈愛の笑みだけだった。

 先生が去り、高城と二人きりになっても、まだ重い空気は残っていた。

「社長……なかなか大変な方を好きになってしまいましたね」

「病めるときも健やかなるときも、妻として愛し、敬い、慈しむ──それが結婚だろ?」

「あはは、そうですね。そうでした」

「苦しい時を一緒に越えてこそ、本物の夫婦ってやつだ。だったら今回の出来事は、その試験みたいなものかもしれないな」