しかも、無理やり連れ出したところで、また実家へ戻るだけかもしれない。
……あれほど帰りたがらなかった家に、なぜ。
あの女は、いったい何を囁いたんだ。
翌日。頭を切り替えて仕事に集中しようとするも、思うようにはかどらない。
捺美がそばにいたときは、すべてがうまく回っていたのに。
今は頭に靄がかかったように重く、身体も気怠さが抜けない。
幸せから地獄へ突き落とされる──まさにその言葉どおりだ。
デスクチェアに深くもたれ、天井を見上げていたとき。
ノックの音とともに、高城が誰かを伴って社長室に入ってきた。
「社長、精神科医の柳田先生です。先生は数多くの著書があり、メディアにも出演なさる第一線の方です」
紹介されたのは、穏やかな笑みを浮かべた男だった。
白衣姿に眼鏡、年の頃は四十代後半。
痩せ型ながら引き締まった体つきで、いかにも医師らしい清潔感がある。
柔らかな雰囲気をまといながらも、眼差しの奥には人を一瞬で見抜くような鋭さが潜んでいた。
……あれほど帰りたがらなかった家に、なぜ。
あの女は、いったい何を囁いたんだ。
翌日。頭を切り替えて仕事に集中しようとするも、思うようにはかどらない。
捺美がそばにいたときは、すべてがうまく回っていたのに。
今は頭に靄がかかったように重く、身体も気怠さが抜けない。
幸せから地獄へ突き落とされる──まさにその言葉どおりだ。
デスクチェアに深くもたれ、天井を見上げていたとき。
ノックの音とともに、高城が誰かを伴って社長室に入ってきた。
「社長、精神科医の柳田先生です。先生は数多くの著書があり、メディアにも出演なさる第一線の方です」
紹介されたのは、穏やかな笑みを浮かべた男だった。
白衣姿に眼鏡、年の頃は四十代後半。
痩せ型ながら引き締まった体つきで、いかにも医師らしい清潔感がある。
柔らかな雰囲気をまといながらも、眼差しの奥には人を一瞬で見抜くような鋭さが潜んでいた。



