「聞いてません」
「え、青ざめて震えていたのに、何も?」
「だからですよ。わけありなんだろうと思ったから。言いたければ自分から話すはずだし……答えたくないこともあるじゃないですか」
──間違いない。捺美の様子がおかしくなったのは、その女と会ったせいだ。
少なくとも桂木が直接関わっていないことだけはわかった。
「あの帽子の女……社長の昔の彼女か何かですか? 結婚するなら、ちゃんと過去の異性関係は清算してくださいよ!」
桂木は怒りに満ちた目で俺を責め立てる。
捺美を傷つけたのが俺のせいだと思っているのだろう。
「違う。きっとその女は……」
言いかけて、唇を噛む。今は断定できない。
「いや、なんでもない。……君の疑いは晴れた。もう戻っていい」
「やっぱり疑ってたんじゃないですか!」
桂木はぶつぶつ文句を言いながら、社長室を出て行った。
「あいつ、大丈夫なのか? あれで営業やってるって問題だろ」
「ええ。売上は多いですが、トラブル件数も社内一です」
「え、青ざめて震えていたのに、何も?」
「だからですよ。わけありなんだろうと思ったから。言いたければ自分から話すはずだし……答えたくないこともあるじゃないですか」
──間違いない。捺美の様子がおかしくなったのは、その女と会ったせいだ。
少なくとも桂木が直接関わっていないことだけはわかった。
「あの帽子の女……社長の昔の彼女か何かですか? 結婚するなら、ちゃんと過去の異性関係は清算してくださいよ!」
桂木は怒りに満ちた目で俺を責め立てる。
捺美を傷つけたのが俺のせいだと思っているのだろう。
「違う。きっとその女は……」
言いかけて、唇を噛む。今は断定できない。
「いや、なんでもない。……君の疑いは晴れた。もう戻っていい」
「やっぱり疑ってたんじゃないですか!」
桂木はぶつぶつ文句を言いながら、社長室を出て行った。
「あいつ、大丈夫なのか? あれで営業やってるって問題だろ」
「ええ。売上は多いですが、トラブル件数も社内一です」



