その夜は二人で夕食をとり、一緒にお風呂に入り、イチャイチャしながら幸せに満ちた一日を終えた。
この世の春とも思えるような、濃密で幸せな日々が永遠に続く──根拠もなくそう信じていた。
けれど、なんの憂いもない時間は、数週間ほどで幕を下ろす。
あまりに呆気なく、あまりにも短く、あまりにも突然に。
思い返せば、予兆のようなものは確かにあった。
あの時、全力で彼女を守れていたなら、こんな結末にはならなかったのかもしれない。
捺美の様子が明らかにおかしかった日がある。
その夜、彼女は俺を拒んだ。
『生理だから』
そう告げられたとき、疑うことなく信じてしまった。
体調が悪そうに見えたのも、そのせいだと納得して。
数日間、身体を重ねることはできなかったが、いつも通り共に眠ってはいた。
生理中は女性が情緒不安定になるものだと考え、過剰に心配するよりも寄り添って見守ることが正しいと思っていた。
だが今にして思えば、あの時の彼女は怯えていた。
日に日に顔色は青ざめ、食事の量も減っていった。
そしてある夜、家に戻った俺を待っていたのは──テーブルの上に置かれた一枚の離婚届だった。
彼女の荷物はすべて消え、姿もない。
『絶対に辞めない』と言い張っていた会社にも現れず、捺美は忽然と姿を消した。
何が起きたのか、誰にも告げぬまま。
この世の春とも思えるような、濃密で幸せな日々が永遠に続く──根拠もなくそう信じていた。
けれど、なんの憂いもない時間は、数週間ほどで幕を下ろす。
あまりに呆気なく、あまりにも短く、あまりにも突然に。
思い返せば、予兆のようなものは確かにあった。
あの時、全力で彼女を守れていたなら、こんな結末にはならなかったのかもしれない。
捺美の様子が明らかにおかしかった日がある。
その夜、彼女は俺を拒んだ。
『生理だから』
そう告げられたとき、疑うことなく信じてしまった。
体調が悪そうに見えたのも、そのせいだと納得して。
数日間、身体を重ねることはできなかったが、いつも通り共に眠ってはいた。
生理中は女性が情緒不安定になるものだと考え、過剰に心配するよりも寄り添って見守ることが正しいと思っていた。
だが今にして思えば、あの時の彼女は怯えていた。
日に日に顔色は青ざめ、食事の量も減っていった。
そしてある夜、家に戻った俺を待っていたのは──テーブルの上に置かれた一枚の離婚届だった。
彼女の荷物はすべて消え、姿もない。
『絶対に辞めない』と言い張っていた会社にも現れず、捺美は忽然と姿を消した。
何が起きたのか、誰にも告げぬまま。



