【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「そうか」

 大翔は嬉しさを押し殺すように小さく呟いたが、口元の緩みまでは隠しきれていなかった。

 だいぶ失礼なことを言ったはずなのに、まったく気にしていないようで安心する。

いや、前半部分は綺麗に忘れているのかもしれない。そういうところも、一緒にいて心地いい。

 大翔も口は悪いけれど、私も大概負けていない。

佐伯さん相手なら、きっとこんな言葉は口にできないだろう。

 佐伯さんはとてもいい人。でも、素の自分でいられるのは大翔の前だけだ。

「あのさ、今夜は……俺の部屋で一緒に寝ないか?」

 大翔は伺うような目を向けながらも、手はしっかりと恋人繋ぎをしている。

 返事をできず固まっていると、大翔が畳みかけるように訊ねてきた。

「嫌?」

 またずるい言い回し。でも、そういうところも嫌いじゃない。

 私は大翔から視線を外し、煌めく夜景を見下ろしながら小さく答えた。

「……嫌じゃ、ない」