【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 二十代にして一流企業の社長となった御曹司──伊龍院大翔《いりゅういんひろと》。

 本来跡を継ぐはずだった父は、母とともに大翔さんが幼い頃に事故で亡くなり、社長だった祖父も高齢で相談役へ退いた。

若くして継いだ大翔さんは、当初こそ不安視されたが、今では実績を重ね、海外からも高い評価を受けている。

 私が初めて社長を見たのは就職の最終面接だった。

役員と並んで座っていて、心臓が飛び出しそうに驚いたのを覚えている。

間近で見ると、その整った顔立ちはまるでスクリーンから抜け出した俳優のようだった。

鋭さを秘めた切れ長の瞳に、意志の強さを感じさせる通った鼻筋。

シャープに引き締まった顎のラインまで、すべてが完璧に整っている。

長い手足を包むのは、白いシャツにブラックスーツというシンプルな装い。

それなのに彼が身につけると、一流の洗練と揺るぎない品格が漂い、周囲の空気さえ変えてしまう。

あまりにも完璧で、まるで別世界の人のようだった。

緊張のあまり、あの時自分がなにを話したのかすら覚えていない。

 ──なのに、なんでよりによって社長がここにいるのよ!