【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「ありがとう、大翔」

　胸の奥からこみあげる思いをそのまま口にすると、大翔はどこか切なげに、とろけるような笑みを浮かべた。

「ヘリで遊覧デートなんて、そうそうできるものじゃないだろう。ましてや専用機を持ってる人間なんて、日本にどれだけいるか」

「……そもそも庶民は、ヘリコプターデート自体しないよ」

　思わず笑ってしまう。規格外の人だ、本当に。

　けれど大翔は、ふいに真剣な眼差しで続けた。

「俺の会社は、平均よりも給料はいい方だと思う。けど、ただの会社員じゃ──捺美の望むものを全部与えられるほど裕福じゃない。その点、俺なら違う。エルメスのバッグだって、宝石だって、海外旅行だって……どんな望みにもすべて応えられる」

　大翔は、やけに真剣な表情で言葉を紡いだ。

　どうしてそんなことを口にするのだろうと、不思議に思いながら見返す。

「俺は、誰よりも捺美を幸せにできる」

　確信に満ちた声。

「……私は、お金が欲しいわけじゃないよ」