【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「高いところは苦手か?」

 気遣うような瞳に、私は小さく首を振った。

「ううん、大丈夫。むしろ……乗ってみたい」

 笑顔を向けると、大翔も安心したように目を細める。

 大きなバラの花束を抱えながら機内へ。

 大翔は甲斐甲斐しく私のシートベルトを締め、さらに機内に備え付けられていた専用ヘッドホンを手に取ると、そっと私の頭に装着してくれた。

 続いて自分も同じように準備を整えると、パイロットへ合図を送る。

 プロペラ音がひときわ大きくなり──機体がふわりと浮き上がった。

「わあ……本当に飛んだ」

 まるで遊園地のアトラクションに乗っているみたい。

鼓動が早まる私の手を、大翔が恋人繋ぎでしっかりと握ってくれる。

 眼下に広がる東京の夜景は、まるで宝石を散りばめたよう。

地上から仰ぎ見ると威圧的に感じるビル群も、上から見下ろせばおもちゃのように小さく見えた。

「すごい……綺麗」

 感動で胸がいっぱいなのに、言葉が追いつかない。

そんな私を、大翔は夜景ではなく、横顔を見つめながら微笑んでいた。

 バラの香りに包まれ、非日常の時間に酔いしれる。